モノ売りからコト売りへ移行できない企業
モノ売りからコト売りへ と叫ばられて久しい。
既にコンセプトは浸透していると言える。
しかし、多くの企業において、実利として得られている事例は少ないのではないだろうか。
目次
そもそも、モノ売りからコト売りにするというのはどういう事だろうか?
- 小売業界で言えば、今まで食料品や生活必需品、あるいはファッションやインテリアというモノを売ってきた。コト売りというのは、買い物をするという体験を売り物にしていくという事である
- 音楽業界で言えば、CDや音としてのモノを売ってきた。コト売りというのは、LIVEや音楽体験を売るという事である。
- 家電業界で言えば、テレビや冷蔵庫といった機能勝負でモノを売ってきた。コト売りというのは、リビングルームあるいはキッチンで如何に楽しい体験ができるかを売っていくという事である。
このように、総じて今まで物質あるいは資産としてのモノという価値から、モノはあくまで手段として、その結果得られる体験価値にコミットしていく。というのがモノ売りからコト売りへのシフトという意味合いである。
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コト売り。というのが何なのかはわかった。しかし、そのコンセプトを理解していても実現できている企業は少ない。
何故コト売りを実現できないのか?
いくつかの企業コンサルティングしている中での問題点が見えてきた。
総じて言うと今までと必要なケイパビリティが異なると言う事なのだが、具体的には、大きく3つの理由があると感じた。
- そもそもどのようなサービスを考えればいいのか。がわからない
- どのように売ればいいのかわからない
- 上記プランができても、シフトができない
一つ一つひらいていこう。
まず、1点目。
そもそもどのようなサービスを考えればいいのか、わからない。
このレベルに留まる企業は実は数ない。
顧客(以後エンドユーザーという意味を込めてカスタマーと言う)が何を求めているのかと言うのは、小売やサービスを提供して来た企業にとっては、ある程度イメージできているし、ポイントも押さえらている。
唯一難しいのは、カスタマーにサービスを提供しているように見えて、実は別の企業からお金をもらっているような会社だ。B2Cビジネスをしているように見えて、実はB2Bビジネスをしている。といった事例。
例えば、アパレルメーカー。良い服を作ると言うことにFocusしているが実際には、百貨店やECサイトに卸しているだけと言うケース。
あるいは、マスメディア。カスタマーに楽しんでもらうコンテンツを作っているようで、売上は広告ベース。
こういった企業は実は驚くほど、個としてのカスタマーが見えていない。マスとしてのカスタマーはよく見えており、トレンドの把握力は高いが、個としては見えていないことに大きなケイパビリティのGAPが存在する。
どのようなサービスを提供したら良いかと言う事を考えるスキームとしては、昔からペルソナを作り、カスタマージャーニーで考えると言う手法が用いられていた。この手法が近年では、より多くの企業にも用いられて来ており、定着化しているように思う。
まだ、やった事がない。と言う企業があれば、かなり遅れている。
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2点目のポイント
どのように売ればいいのか、わからない
ここには、大きく二つハードルがある。
一つは、ビジネスモデル。
もう一つは、それを実現する体制。である。
ビジネスモデル
今までモノに定価をつけて売りきりでやって来た。競合よりも機能を高くし、Priceを決め、プロモーションや販路を押えれる。そこをプランすればよかった。
しかし、カスタマーがどんな"コト"に価値があるかと言う事がわかり、提供すべきサービスがわかっても、一体どのようなビジネスモデル。もう少し言うとマネタイズモデルにすべきかは、難しい。
何故難しいか。それは、単純に提供するコトではお金くださいとは言い難いからである。
例えば、Googleは、検索を売ってはおらず、インターネットから情報を見つけると言う体験価値を提供している。これはわかりやすい。ではどのようなビジネスモデルかと言うと、広告でマネタイズしているのだ。B2Cの体験価値を提供し、B2Bでマネタイズしている。
あるいは、アマゾン。もちろんECで購入する事で売上をあげているが、彼らの秀逸な顧客体験価値はアマゾンプライムにある。届く時間が短いと言うだけではない。
マネタイズモデルとしては極論すると二つのパターンしかない。
一つは、とにかくユーザーを集める。ユーザが集まったらマネタイズの方法を考えればいい。GoogleやFBは広告だし、アマゾンはEC。リクルートはマッチング。ユーザが集まればマネタイズの方法は結構あるものだ。
二つ目は、サブスクリプションを提供する事。ネットフリックスは月額で見放題。アマゾンプライムも月額制。毎月のサービス提供に対して課金すると言うモデルを志向すべき。
今までのモノを売る毎の都度課金形態では、つまるところその一回渡すことにFocusされるため、体験価値にはそぐわない。
もう一つのポイント
これらをサービスとして実現する体制
上記の通り、ビジネスモデルは完全にワンタイムの売りきりではなく、継続的にカスタマーと付き合っていく運用モデルとなる。その際には必要となる組織機能は全く異なる。特に運用をする上で、カスタマーの声や満足度の分析、それに見合ったアクションをうつ。いわゆるPDCAサイクルを如何に高速に回し、サービスをより魅力的にしていくかがポイントである。
この成功事例は例えば、通信会社。携帯電話の新規加入と解約が月次でどのように推移するか。とか、ゲーム会社におけるスマホゲームの課金を如何に伸ばし、他のゲームに人を取られないか。など事例は多数あり、必要な組織機能やそこに必要となる人材ケイパビリティを設計することは可能である。
しかし、ここへのシフトが困難を極める。
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最後の、3点目。
プランはできてもシフトができない
これが、本質的な問題となる。
アイディアやどうすればうまくいくかの青図はできても、移行が困難を極める。
特に現業のビジネスが成功していればいる企業ほど難しい。
これは、やり方としては、本当にスタートアップにまず始めさせて、それを買収する方が圧倒的に早い。(スタートアップを志す若者は覚えて置くといいと思う。既にやっている大企業と同じ分野でも、ビジネスモデルが異なれば破壊できる。破壊しなくともそこそこまでやって、その大企業に売るのが一番良い)
何故難しいか。
それは、既存のビジネスを一時的に壊すこと。収益化までに時間がかかること。そもそも運用できる人がいないこと。の三点が最大の課題である。
これは自分の身になってみればよくわかる。
例えば、サラリーマンなら、現状月給をもらって生活している。その職を一旦壊して、別で稼ぎましょう。1年くらい我慢すれば、さらに将来に渡って給料がもらえるようになりますよ。ただ、そのためには、今までやってきたこととは別の能力を勉強してつけてもらうことになります。もちろんそれがうまくいくかは誰も保証はできません。やってみないとわかりません。
と言われて、それを決断できる人がどれだけいるか。また、独身ならまだしも。家族も含めて合意をとって判断できるか。
まず即決する人はいない。100人いたら、数人は時間をかけて決断するが、8割はもう少しうまくいくかどうかを検証したい。と言う。そして、もう手遅れになったり、唯一アメリカでうまくいっている事例が見つけられたそのうちの1割程度がようやく決断を行う。と言う構図である。
大企業は、社員をたくさん抱えているし、既存の成功体験も成功事業もある。即座にそれが無くなるわけでもない。その中で、悪く言えば博打だ。と言えるような事業に賭けられる人は少ない。
端的に言えば、失敗した時に失うものが大きすぎるのだ。しかし、彼らは、失敗しなくとも失っていくと言う現実も見ない。
どうだろう。
皆さんの会社にもこのような実態があるのではないだろうか。
日本の企業からイノベーションを起こすべく、勇気を持って立ち上がっていきたい。
コト売りについてもっと理解したい方は、こちらの本も参考になります。
サブスクリプション・マーケティング――モノが売れない時代の顧客との関わり方
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