メディア企業がデジタルトランスフォームできない理由
新聞社、テレビ局といったメディアが、なぜデジタルの世界に踏み込まないのか、踏み込んでいたとしてもイマイチパッとしないのか?
デジタルを展開できるだけのスキルがないからなのか。
あるいは、既存ビジネスにしがみついて、その既得権益を守りたいと思っているのか。
実は、そこには、非常に構造的な問題がある。
ビジネスモデルの問題である。
この点を解説したい。
日本のマスメディアにおける経営課題
まず、新聞とテレビで同じマスメディアとはいえ、状況は大きく異なる。
新聞は、購読料、いわゆるユーザ課金と紙面への広告モデルであるが、どちらも大きく右肩下がりである。
経営層含め、デジタルトランスフォーメーションの重要性を理解しており、これでも進んでいる状況にある。
一方、テレビ局は、NHKを除けば全て広告収入により成り立っている。一部の局を除けば成長こそしていないが、新聞ほど右肩下りではない。
テレビでの広告市場は2兆円でほぼ横ばいである。
ちなみに、インターネットの広告は毎年10%以上伸びており、1.5兆を突破した。
海外と日本の状況の違い
これは海外の状況とは一致しない。
理由は、色々言われているが、一番大きいのは日本の人口構造にあると私は考えている。
どういうことかというと、日本では既に若年層が少なく、高齢者層がボリュームゾーンとしては大きい。高齢者層はパソコン、スマホへのシフトは大きくなく、テレビを見続けているのだ。正確には、可処分所得時間において、若年僧はテレビに費やす時間をスマホに費やす量が大きくなる一方で、高齢者層は、テレビに費やす時間がそれほど減少していない。
日本人を人数で考えるとまだまだテレビを見ている人が多いのだ。
フジテレビが圧倒的に負けている理由もここにある可能性が高い。
どちらかというと若年層向けに作る番組は高齢者は見ずに、若年層はテレビ以外に時間を使っている。
若年層向けに勝ち続けたチャンネルがより早く離れていっている証拠である。
そして、全体的に番組編成も若者向けから高齢者向けになっている。これは今のビジネスモデルにおいては、必然的な結果である。
インターネットの状況
一方で、インターネットについて考えてみよう。
メディア企業がインターネットでお金をもらう方法は二つしかない。
- ユーザーからもらうか
- 企業からもらうか
である。
前者は、ユーザ課金である。
ネットフリックスや日経新聞のように月次で定額をもらうサブスクリプションモデルもあれば、アマゾンの電子書籍やNHKオンデマンドのように1本いくらで課金するようなモデルである。
後者は、広告モデル、あるいはマッチングモデルがある。
YouTubeは広告モデルだし、Googleの検索やFaceBookも広告モデルである。
あるいは、リクルートのように住宅を検索して資料請求する毎に企業から成果をもらうというマッチングモデルもある。
ユーザ課金を考えたときに、我々は一体いくら払うだろうか?
例えば新聞であれば、月次で4000円を払っていた。読売.comや朝日.comに4000円払うだろうか?
ネットフリックスやhuluは、見放題で月次1000円である。
dTVは同じく月次500円、
アマゾンに至っては、年間の課金だが、月次ではわずか300円である。
例えば、huluの会員が200万人になったとしたら、月次では20億円、年間240億円となる。(huluはまだ200万ユーザに届いていない)
ちなみに今の民放キー局1社での年間の広告売上は、2000億〜3000億程度である。
桁が一つ違うのだ。
では広告はどうか?
広告はより悲惨な状況である。
例えば、月間のプレビュー数が2億程度、年間20億PV程度であれば、年間で稼げる広告費は20億円程度になる。
新聞社のニュースサイトなどでも年間100億円程度にしかならない。
では、年間1.5兆円もの広告費はどこにいっているのか?
ほとんどが、GoogleとFBとYahooがとっている。その割合は7割とも8割とも言われている。残りのわずか3000億〜4000億を無限ともいえるサイトで分割しているのだ。
繰り返すと、キー局の広告売上が3000億程度であるが、そのパイを取り合っていることになる。
メディアの経営者としてこんな市場に入りたいと思うだろうか?
新聞やテレビ局のサイトのPVとGoogleやFB、Yahooが叩き出すPVは桁が二つくらい違う。
当然の結果である。
テレビは免許制で、数チャンネルに制限されてきた。その中での争い、その中で1.2億人を取り合ってきた。
一方で、ネットは無限である。無限であるが、プラットフォーマーがPVの大部分を牛耳っているのが実態である。
メディア企業がデジタルにトランスフォームできない理由は、
デジタルでは儲からないからである。
しかし、前述した通り、まだ生きながらえているのは高齢者のおかげである。
今の若者はテレビを見ず、10年もしたら、状況は大きく変わってくる。
今のうちに、手を打たないと、手遅れになる。
カスタマーである一般視聴者も危機感を持つべきかもしれない。
日本の良質なコンテンツが失われる日が、意外と早くやってくるかもしれない事になる。
さて、どうすべきか。。
それはまたの機会に。
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